2018年2月20日火曜日

20180217 S04TSG 1

シャルケのテデスコ監督とホッフェンハイムのナーゲルスマン監督の対決をゲルゼンキルヒェンのヴェルティンス・アレーナで観戦してきました。前半後半に分けて試合分析を書いていきたいと思います。

試合前の情報

昨シーズンの後半戦は毎試合欠かさずチェックしていたナーゲルスマン監督のホッフェンハイムですが、今シーズンはほとんど試合を見れていませんでした。テデスコ監督のチームもしっかりと試合を見れたのは初めてでした。
ドイツで増えつつある新しい世代の監督の代表格として挙げられるのがナーゲルスマン監督。今シーズン前半戦はヨーロッパリーグもあったせいか、昨シーズンほどの成績は残せていません。週の半ばに試合が組まれるというスケジュールに加え、HV(Halbverteidiger)のズーレと6番ポジション(Secher)のルディというビルドアップ(Spielaufbau)の核となる選手を失ったことも大きな影響を及ぼしていると思います。更には、ナーゲルスマン監督がKicker誌のインタビューで語っていたことから推測するに、彼もトゥヘル監督と同じくマインツ大学シェルホルン教授のディファレンシャルラーニング理論をトレーニングを計画する際に念頭においていると思われます。週の半ばに試合が組まれるというスケジュールのためにこのアプローチが機能しているのか、回復に時間を割かなくてはいけないことがチーム作りにどのように影響しているのかは、僕自身もう少しこの理論に関して理解を深めていきたいと思います。
対するテデスコ監督は「シャルケ」というドイツ有数のビッククラブを率い、ヨーロッパリーグを狙える位置につけています。Spielverlagerungに掲載されている彼のインタビューを読み、ぜひ彼のチームの試合を観てみたと思っていました。

両チームのラインナップ

シャルケは中盤菱形(Raute)の1-4-4-2のフォーメーションで試合に入ります。5レーンの両サイド(Außenbahn, Flügel)は基本的には最終ラインのサイドバックのみ、中央とハーフスペース(Halbraum)に人を集めた配置です。菱形の底、6番ポジションは元トッテナムのスタンブリが入り、頂点にはディ・サント、両インサイドハーフはゴレツカとシェプフでした。
対して、ホッフェンハイムは1-3-1-4-2で、両ウイングバック(Flügelverteidiger)は守備時には最終ラインで5バックを形成します。6番のポジションはグリリッチュ、3バック(Dreierkette)の右にはビチャクチッチ、右のウイングバックはカデリャーベク、インサイドハーフはクラマリッチとアミリ、前線はウートとサライです。

以下に幾つかのシーンをピックアップします。表記は分:秒になります。

前半、シャルケの菱形の中盤が守備で非常に機能していた

  1. 0:26 - 0:34 ホッフェンハイムの攻撃のビルドアップ、左のタッチライン際に開いたヒュプナーからダイレクトで斜めのボールがアミリ入りますが、6番ポジションのスタンブリがアミリからボールを奪ったシーン。
  2. 17:55 - 18:30 ホッフェンハイムはゴールプレーヤーのバウマンから最終ラインへ繋いで攻撃を組み立てていくシーン。シャルケは相手のビルドアップを自らの左サイドへと誘導し、サイドに人をかけて奪おうとします。
  3. 19:13 - 19:26 ホッフェンハイムのバウマンからフォクトに繋いで組み立てるシーン。バウマンに対してディ・サントがプレッシングに行ってしまったため、グリリッチュにフリーでボールをつながれますが、菱形の底にポジションを取っているスタンブリが前に出てボールへのプレッシャーをかけに行きます。同時にシェプフはスタンブリの空けたポジションを念頭にボールが中央のクラマリッチに出た瞬間にアタックしてボールを奪い返します。
  4. 22:18 - 23:07 シャルケの守備陣系がホッフェンハイムには相当ストレスになっていたのが伺えます。フォクトにはボールに触らせず、左右のHVにボールを入れさせます。中央とハーフスペースには階層的に人を配置しているため、ヒュプナーはパスを斜めに入れることができず、縦にロングボールを入れる以外の有効な選択肢が見つけられませんでした。
  5. 28:55 ホッフェンハイムのスローインに対して、全体がボール中心に密集したポジションを取りつつ、中盤の菱形も保たれています。
  6. 29:36 フォクトからグリリッチュに斜めのパスが入ります。菱形の頂点にいるディ・サントの背後でボールを受けることに成功したグリリッチュですが、コントロールが乱れたところをゴレツカとディ・サントに挟まれてボールを失います。

前線の2枚、エンボロとブルクシュタラーのポジションがホッフェンハイムのビルドアップのストレスに

中盤菱形で取り上げたシーンとも重複しますが取り上げます。
  1. 18:05- バウマンからヒュプナーにボールが出たシーンではエンボロがボールへのプレッシャーをかけ、ボールに遠い方のブルクシュタラーはフォクトをしっかりとマークしています。
  2. 18:22- 1のシーンから続きになりますが、バウマンがボールを持っても前線二枚でフォクトを挟み込むように中央にポジションを取り牽制しています。
  3. 22:31- 同じように二人でフォクトを挟み込んでポジションを取ります。
以上に挙げた点から、前半シャルケはホッフェンハイムの攻撃の組み立てにストレスを与えて、良い形で前線へボールを運ばせないことに成功していました。中盤は距離感よく菱形に配置されていることにより、中央とハーフスペースへのパスコースが見つけにくく、HVがボールを持って前進しようとしてもサイドへ誘導し数的優位を使ってボールを奪っていました。
シャルケの二点目のシーンも、フォクトがエンボロにパスをひっかけてしまい無人のゴール前でボールを失ってしまったため(27:37)ですが、組み立てがうまく行っていないストレスがフォクトの判断を誤らせた可能性が高いと思います。

しかしながら、試合中適切なポジションを取り続けるにはボールの位置、敵の位置、味方の位置、ピッチ上での位置の4つの要素を常に考え続ける必要があり、ミスなく行うことは不可能です。

スタンブリの空けたスペースを使われる

  1. 30:08- シェプフが右のウイングでボールを失います。ボールを奪ったアミリは敵のゴールには背を向けている状態なので、スタンブリは周囲の状況を確認してからプレッシャーをかけに行きます。その空けたスペースをクラマリッチに狙われ、フォクトからのパスを引き出します。仮にクラマリッチがターンしていたら、或いは更に高い位置のウートにボールが渡っていたら危険になり得たシーンでした。
失点を受けてホッフェンハイムはビルドアップの際にグリリッチュの脇にアミリやクラマリッチが降りてきてボールを引き出そうという工夫を行ってきます。フォクトという優秀なパサーが最後尾にいて一本のパスで高い位置まで前進することができます。彼のパッキングレート(PACKING-RATE)はドイツでも相当高いはずです。パッキングについてはリンクの動画に詳しく説明されています。そんな彼がいるにも関わらず、ボールを前に運ぶためにインサイドハーフが低い位置に降りてこなければならないのはホッフェンハイムにとってはマイナスですし、シャルケの守備組織がよく機能しているが所以です。

ホッフェンハイムの攻撃

  1. 40:39- シュルツが左のウイングでシェプフを剥がしスタンブリを自分にひきつけます。それによりウートがスタンブリの背後をつき、ハーフスペース、中盤とディフェンスのライン間でボールを受けることに成功するのですが、ナウドがしっかりと寄せており、中への進路を絶たれ外への迂回を余儀なくされます。
  2. 42:21- アミリが跳ね返されボールを拾って左へサイドチェンジ(Seitenwechsel)します。これにより、シャルケは横のスライドを強いられ、中盤の各選手間の距離が少し間延びします。タッチライン際でボールを受けたクラマリッチはそのまま同じレーンのシュルツに預けて、中へつまりより内側のレーンであるハーフスペースへ侵入してボールを受けます、相手の6番のポジションの脇を狙ったプレーですが、スタンブリがしっかりとスライドしてドリブルを外に誘導、コントロールが大きくなったところを掻き出されます。昨シーズンからホッフェンハイムによく見られるウイングで相手をひきつけて空いたハーフスペースに侵入する形でしたが、スタンブリのカバーが良かったです。
後半分は改めて書きたいと思います。

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